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執筆者の写真AKIRA INOUE

α7IIIという選択(後編)



1つはAF性能の高さだ。 α7R3は位相差検出方式が399点、コントラスト検出方式が425点。 これでも十分凄いが、

α7IIIは35mmフルサイズ時、位相差検出方式が693点、コントラスト検出方式が同じく425点。

約300点の測距点数の違いは、実際の撮影では大きな差となる。


α7R3を使っている時、ファインダーの中で端に行くほどAFは迷い始める。

しかし、693点もの測距点数を持つα7IIIは、ファインダーの端に行っても、

サクサクAFが合照する。これは咄嗟の時にも大いに役立つ。


2つ目が画素数だ。

実は各社フラッグシップ機と言うのは、それほど高画素ではない。

CANON 1DXMark IIIでも2010万画素だし、SONY α9系でも2420万画素だったりする。 Nikon D6でも2082万画素だ。

理由は分からないが、画素数を抑える代わりに、その他の機能を高めてトータルとしての

完成度を上げているのだと思う。


また、高画素になれば、実はそれを扱う環境もアップデートしないとならない。

現代のフォトグラファーはPCが無ければ仕事にならない。高画素データを扱うには、マシンパワーに余裕のあるPCが必要になってくるが、当然、値段も張ってくる。 そして、高画素データは渡す相手にも負担を強いる時がある。 例えば、デザイナーや製作会社にデータを渡した時に、自分の作業環境と差があった場合、

相手にとっては「ハンドリングのしづらい扱いにくいデータ」になる事もある。


3つ目はカードスロットがダブルになった事だ。

仕事撮影で最も怖いのは「撮影データが無くなる事」

あらゆる事情があったとしても、データロストは避けなければならない。

枚数が少なく済みそうな案件なら、同じファイル形式を同時書き込みにすればいいし、 枚数が必要なら、RAWとJPEG同時書き込みで、最悪JPEGは残れば・・・という設定も出来る。


ダブルスロットになった事は、α7IIIを選択した要因の中でも、かなりのウェイトだったりする。

4つ目はローカル特有の問題でもあるが、 仕事の8割ぐらいがローバジェット(低予算)案件という現実だ。 例えば、Canonの1D X Mark IIIだが、ボディだけで最安値で約73万。Amazonだと約83万だ。これほどまでの高価格は、それに見合ったギャランティの仕事で使うのに必要だからだろう。しかし、WEB製作会社などからのローバジェ案件の依頼に、果たしてフラッグシップ機の性能が必要だろうか。


もちろん、1D X Mark IIIをぶら下げて現場に行けば、いかにも「プロカメラマン」風情に見えるし、周りから「凄いっすね〜」と言われるだろう。

しかし、自分の写真仕事にそんなモノは必要ない。 費用対効果を考えた場合、α7IIIの性能は高い所でバランスがとれてると思う。

新しいセンサーのお陰で、画素数は抑えられているが高繊細な写真、そして、扱いやすい画素数。上位機よりも高いAF性能、データロストを回避出来るダブルスロット。


自分が写真作家だったり、関東で活動しているフォトグラファーなら、間違いなくα7R4を選んでいただろう。

現実はただの職業写真家だし、ローカルで費用対効果を考えながら機材の取捨選択をしているカメラマンに過ぎない。

自分の置かれた場所と立場では、α7IIIがベストの選択だったわけだ。

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